人が「あつもの」に懲りても「なます」をふかないワケ
どうも人間は本質的に、過去の教訓を活かしにくい性質があるらしい。
行動経済学いわく、人は歴史や過去の失敗から学ばない。
人の脳はそういう残念な性質をもつそうな。
サブプライムショックってあったろ?
不動産・株式市場のバブル崩壊だ。
リーマンショックとも呼ばれてる。
冷静に考えたらあれが起こったのは奇妙だ。
なぜならバブルにのって大損した人はみんな、過去の金融バブルについて知る機会はあったし、多くの人が知ってたはずなんだよな。
例えばチューリップバブルとか南海バブルとか世界大恐慌とかITバブルとか。
こんだけ前例があるのになんで損しちゃうんだよ。
「A君がB君に金をだまし取られた」って聞いたら、みんなB君に警戒するだろ?
A君がダマされたあとにB君にダマされる子はいないはずなんだよ。
なのにバブルの失敗は繰り返されちまう。
つまりすでに過去に前例があって、しかもそれをみんな知ってるのに、肝心なときになぜかその知識が活かされない。
行動経済学はさらに言う。
直接に自分自身が痛い目に合った経験があったとしてもなお、その教訓はしばしば活かされないんだと。
たとえばITバブルで大損した本人が、サブプライムショックでまたまた大損しちまうってことだ。
どうやら人間の脳には、直近に起こったことを過大に重要視して、昔からの長期的な流れや出来事を無視してしまう習性があるらしい。
「あつものにこりてなますをふく」ってコトワザがあるが、人はあつものに懲りたあとなますをふくのはしばらくの間だけで、時間がたつと、忘れたわけじゃないんだが、なますもあつものもふかなくなるってことだ。
まあ考えてみりゃそうだ。オレたちの先祖がライオンに出会ったとき、昔の出来事なんか思い出してたヤツは、みんな食べられちまっただろう。直近の出来事(ライオン)に優先してよく反応できる遺伝子が今まで生き残ってきたと考えれば、人の脳が歴史を軽視するのもうなずける。
しかし今の世の中「あのときのこと覚えてたらこんな失敗してなかったよなあ」と感じることが多々ある。
同じ失敗して「また同じことやっちまった」と後悔する。
しかし違う考え方をすれば、一般的に人が過去から学ぶのが苦手なら、自分はそうならない仕組みを設計すれば、人よりかなり有利になるんじゃないか?
人類がアラーム機能を発明したことを思い出せ。
オレら人間は、寝坊しちまう性質を克服するため「寝る前にアラームをセットする」という仕組みを設計したじゃねえか。
「紙とエンピツを持たせれば、人は万能マシンになる」
というアラン・チューリングの言葉に、何かヒントがありそうだ。
動物である自分の脳の支配から解放されて、自分で自分の行動を決められるるようになりたいもんだ。